2010年03月28日

私的、広島と映画とアニメーション論 18 10フィート映画運動

18 10フィート映画運動

 広島映画センターは映画を通して平和教育を進める立場から、広島平和教育映画ライブラリーを設置し、初の原爆告発アニメーション『ピカドン』を普及していたが、1980年7月、10フィート映画運動が始まり、広島事務局を引受け、私は事務局次長を受けた。

 10フィート映画運動とは。

 1978年に開催された第1回国連軍縮特別総会で、ヒロシマ・ナガサキの惨劇の跡を撮影した映画フィルムの存在を知り、そのフィルムをコピーとして取り寄せる事ができるとわかった。この莫大な量の原爆投下記録フィルムを、平和のための歴史的資料として日本国内に永久保存すると共に、それを基に核兵器廃絶を訴える新しい海外版を含む数種の記録映画を制作し世界的な上映運動を繰り広げる運動です。
 
 米国に保存されていたフィルムの長さが約八万五千フィート。それを映画として制作するためにネガ用とプリント用に二本、永久保存用のネガティブフィルムとして一本、計三セット、つまり入手すべき延べフィート数は、約二十五万フィート。そしてその入手と映画制作費用等に、総額七千五百万を見込み。二万五千人に呼びかけ、一人10フィート三千円の募金を呼びかける運動です。

 募金に参加された方には10フィート映画の鑑賞券を配った。
広島事務局は、1982年5月現在4200万円の募金を集めた。全国で1億3000万円余の募金が集まり、10フィート映画が出来た。

10フィート映画は

第一作、学校教育用20分『にんげんをかえせ』1982年1月完成。
第二作、青年向け様42分『予言』1982年8月完成。
第三作、劇場・テレビ用90分『歴史』1983年完成。

第一作の『にんげんをかえせ』は、評判が高く、広島県内はもとより、全国に、外国にと、16ミリフィルムは1600本近く販売され、上映された。1982年に開催された第2回国連軍縮特別総会へ参加する運動と結びついた。

10フィート映画運動記録集
10feets.pdf




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2010年03月21日

私的、広島と映画とアニメーション論 17 青葉学園物語

17 映画『青葉学園物語』

 1978年の夏、『子供たちに良い映画を見せよう』との願いを実現すべく、広島映画センターは広島市内の子ども会と共に、名づけて『親子映画館=星空劇場』として小学校の運動場を会場に映画会を企画した。作品は大澤豊監督の子ども同士の愛と友情を描いた『ガキ大将行進曲』。夏休み期間中の毎日、1日2〜5会場で、夜8時上映開始の映画会。(生憎の雨の時は体育館を予備とした。)この企画は大好評で、「広島を題材にした映画を作ろう」と・・・・。発展した。

 1980年、広島映画センターの企画で、映画『青葉学園物語』を製作協力した。
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映画『青葉学園物語』製作発表会

久村敬夫さんの文を紹介する。
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映画センターが企画して映画化=佳作『青葉学園物語』

 広島を題材にした映画は数多い。その全てが“原爆映画”―といっても過言ではない。
 昭和27年の『原爆の子』(監督=新藤兼人、主演=乙羽信子)にはじまって、平成19年の『夕凪の街 桜の国』(監督=佐々部清、主演=田中麗奈)に至るまで、五十本をはるかに上回った本数だと思う。
 そんな中で、“広島の映画史”に特筆されてもいいと思うのが、昭和55年の『青葉学園物語』(監督=大澤豊、主演=市毛良枝)である。
 この作品は、広島市在住の児童作家・吉本直志郎の原作(昭和54年度日本児童文学者協会新人賞受賞作品)で、広島映画センターの企画による映画化であった。こうした地元広島の企画で製作された映画は前例がない。

 映画は、佐伯郡五日市町(現佐伯区五日市町)にあった児童福祉施設「童心園」がモデル。戦後の広島が舞台で身寄りのない原爆孤児たちが、明るくたくましく生きる姿を、ユーモアをまじえて感動的に描いたもの。

 広島でオールロケというのも大変だった。昭和55年7月25日にクランクインし、秋には公開の予定だった。ところがこの年はなぜか長雨にたたられ、撮影は順調に運ばなかった。
 そんなことで、完成は一ヶ月半遅れて11月19日夜、やっと試写会が広島市公会堂(現広島国際会議場)で催された。会場を埋めつくした観客は、試写を見て割れんばかりの拍手を送った。
正直、戦後の子どもらは、物質的には貧しかったものの、精神的には豊かさがあった―とする思いが、実に明るく、たくましく描かれ、文字どおりの佳作に仕上がっていた。

 それにも増して、広島映画センターのスタッフ一同の喜びは筆舌につくしがたいものがあったと思う。
試写会で高い評価を得た『青葉学園物語』は、広島名画座で昭和56年1月7日から2月3日までの二十八日間、上映するとともに、県内を巡回上映して大成功をおさめた。

 こうした映画は、たとえ良質のものでも、必ずといってもいいほど赤字がともなうものである。ところが、この映画製作に限っていえば赤字どころか、利益すら出た―という。まさに同慶の至りである。
              (元広島映画手帖社代表取締役の久村敬夫)    
              シネマッド CINEMAD 2009・1月号
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 映画『青葉学園物語』は1981年の夏、広島市子ども会連合会、製作ロケ地の五日市町子ども会連合会とともに上映。10万人が鑑賞した。





posted by T.K at 16:38| Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年03月14日

私的、広島と映画とアニメーション論 16 モスクワ国際映画祭

16 モスクワ国際映画祭 

 私は、1979年8月14日〜28日に開催された第11回モスクワ国際映画祭に日本映画代表団の一員として、『ピカドン』を持って参加した。
『ピカドン』のことは触れてはいないが、「モスクワ映画祭に参加して」のレポートを中国新聞に書いた。 9月18日付

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モスクワっ子 空手映画に夢中  「立派な芸術」と激賞
 
客席六百のザリャーディエ劇場は満席。通路、壁際にも立ち見でいっぱい。私はその舞台に立ってあいさつすることになっていた。第十一回モスクワ国際映画祭(八月十四日〜二十八日)二日目の昼食時、日本映画代表団の事務局を担当している映画評論家の山田和夫氏に「今晩、松竹の『地上最強のカラテ結集編』が、インフォメーションとして上映されるが、松竹の関係者が二十日でないとモスクワ入りしないので、代わりにぜひ、あいさつしてくれ」と懇願され、引き受けてしまった。舞台あいさつといっても、司会者から名前を紹介され、舞台からおじぎをするだけ。それならと引き受けてしまう。

 上映開始二十分前に劇場に着く。劇場前は黒山の人だかり。広島では最近、お目にかかったことがない。ロビーに入ったら、こちらが日本人とわかってか、一人の青年につかまった。「私はカラテの大ファンである。カラテは立派な芸術である。カラテはサイエンス(科学)である。モスクワにはカラテの教科書がない。あなたが持っていたら譲ってくれないか」と迫られる。正直いって「空手」の知識はなく、しどろもどろ返事するハメになり、大変なことを引き受けてしまったと後悔。

 超満員の会場は熱気むんむん。みんなの目は私に空手の型を披露してくれといわんばかり。舞台あいさつが終わってロビーに出たら、日本代表団の男性通訳全員三人とも姿をみせている。聞いてみると、三人とも空手ファン。一人は世界大会に出場したという。いまモスクワでは六千人の人が空手道場に通っていて、大変なブームであることを知る。

 後日、日本代表団の記者会見の場に出席していたモスクワの新聞記者が、空手のテキストがぜひ欲しいと寄ってくる。記者団の代表質問でも「日本のカラテ映画は大変すばらしい。主演の人たちはカラテのプロか」と聞く。岡田東映社長は「俳優千葉真一はプロではないがレッスンをしている。近く、佐藤純弥監督、千葉真一主演の映画を東映とソビエトモスフィルムの合作で撮ることが決まった」と答え、記者団は満足。
 
 街頭で出会うモスクワ市民から「あなたはヤポーニャ(日本人)」と問われ、「ダー(はい)ダー」と返事すると「カラテはすばらしい」と空手の型を見せてくれる。来年のモスクワ・オリンピックには「空手」の種目が入るのではないかと思うくらいの人気に驚いた。三年前のタシケント映画祭に参加した時、映画『必殺女挙士』の東映女優・志穂美悦子に人気があったことからみると、いまモスクワの空手ブームは最高潮だ。

               小森敏廣(広島県映画センター連絡会議議長)
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mosukuwa1979.jpg

『戦争と平和』のナターシャ役などで知られるソ連のスター女優リュドミーラ・サベーリュアさんと交流する筆者  =モスクワのフィルムスタジオで=




posted by T.K at 14:15| Comment(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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