
被爆45周年を前にした1989年12月、「はだしのゲン」を描いた漫画家、中沢啓治さん(ゲンプロダクション代表)から中国放送に長編アニメーション『クロがいた夏』の共同製作の申し入れがあった。私は当時、報道センターの部員であったが映画製作の実績があるとのことで中国放送の窓口となった。
中国放送はシナリオ、絵コンテの社内検討を経て1990年3月共同製作を決めた。制作協力に広島映画センター、タイガープロダクション。監督白土武。
3月19日、製作発表と子役の声優募集を広島市政記者クラブで行った。4月29日、中国放送テレビスタジオにてオーデション。513名の応募者から13名を選考して審査。5月7日、3名の子役声優を決定し記者発表。クロを拾って育てる主役の伸子役に兵庫県の田口悦子さん、弟の誠役に呉市の小刀将弘くん、伸子の同級生の広子役に広島市の中島ゆきさん。三人とも声優を務めるのは初めて。中沢さんは「三人とも自分がイメージした役にぴったりで、良い作品ができると思う」とコメント。
5月17日、『クロがいた夏』製作・上映を成功させる会を、広島映画センターを事務局に発足させた。全国配給は、広島映画センターが加盟している全国映画センター。
6月4日映画は完成。
1990年6月5日中国新聞朝刊
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原爆アニメ「クロがいた夏」完成
自らも広島で被爆した劇画家中沢啓治さん(51)の原作・脚本による長編アニメーション『クロがいた夏』(製作・ゲンプロダクション、中国放送)が完成し四日、東京・銀座の銀座ガスホールで試写会があった。小さな姉と弟にかわいがれていたネコが原爆で死んでいく物語で、被爆四十五年のこの夏、広島など全国で上映される。
この映画は中沢さんの被爆体験をもとに製作されたアニメで、上映時間は七十五分。子供たちと黒い子ネコの心の交流を描く中で、戦争の非情さ、原爆の怖さを訴えている。試写会に集まった関東地方の上映運動関係者ら三百人を前に、中沢さんは「クロは私の家にいたネコ。長い間描きたいと思ってきましたが、やっとクロの記録が残せた気がします」とあいさつした。
『クロがいた夏』は六日に広島市で試写会の後、二十三日に広島市安佐南区民文化センターで初上映される。配給協力は映画センター全国連絡会議。広島地区での上映問い合わせ先は、広島映画センター、『クロがいた夏』製作・上映を成功させる会。
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配給協力をした映画センター全国連絡会議は長編アニメ『クロがいた夏』120万人動員を掲げ、11月30日現在、497,197人に見せている。
広島では中国放送事業部主催で上映、73,379人に見せた。